おやすみ、っていう言葉を待ってたのにその声すら聞こえてこない。それどころか電話の向こう側に翔太の気配が感じられなくて不安になる。

失敗した。
本当に後悔先に立たずというけれど、その通りだわ。
けれど、言った言葉をなかったことにはできないから、あたしは恐る恐る受話器越しから存在が感じられない翔太を窺う。



「しょ、うた……?」

『あ、…………おやすみ』



震えた声が聞こえた。
翔太は今、何に動揺したの?あたしの問い掛け?それとも別の何か?


本当に、……言わなければよかった。
翔太が謝った時点で雰囲気はいっそう柔らかいものになったからそのままで電話を終えればきっと明日が楽しみになる。


このままじゃ、明日は真っ先に翔太の顔色を伺うことになりそう。



電話で声を聞くだけで浮上していた気持ちで広い部屋もベッドもなんとか乗り切れていたのに、今日はベッドで一人眠れそうにない。

手を伸ばした先に翔太のぬくもりがないこと。
抱きしめてくれる温もりがないことをいっそう感じてしまうに違いないわ。