「もしもし…」

弱そうな声
迷いが隠せないような、細い声

思わずため息をついてしまった

「昨日のこと、覚えてる?」

「記憶、ない」

「どこからどこまでないの?」

「カ、カラオケ入ったところまでしか…」

「カイちゃんから動画、送られてきた?」

「ん…」

「見た?」

「…」

ん?
なんで何も言わない?

「見れない…」

「は?」

「こ、怖くて見れない…
最初の方の途中まで見たんだけど、そのあと怖くて…」

その瞬間、許せないような苛立ちが込み上がってくる


『逃げんなよ!』

いつかの叫び

『自分がしたことなら、責任持て
向き合えよ』

いつしか私が発した言葉
数年前の傷をなぞるように次々と頭の中を巡る記憶

6年以上の親友が、私の好きな人を奪った日
その全てを知ったあの日

ずっと信用していて、相談していた
まだ幼かった高校1年生から、ずっと…
15歳から22歳まで
振られた元カレからやっぱり戻ってきてほしいと言われて
離れてわかった、私のことが好きだって
半年間しつこいくらいにその想いを告げら続けた
その時私は上手くいってない彼氏がいたから、そっちをはっきりしてから付き合いたいって
相手にも、親友にもバカ正直に話していたの
すごく悩んだから、毎週のように相談して
それなのに最後の最後で、なんの前触れもなくひっくり返った