「ん、ユーマ」

「なんで…」

「いや、今朝ユーマからLINEきてさー
ユーマも彼女に『好きかどうかわからなくなった』って距離置かれたらしく?
召喚されて、じゃあテニスしよーぜってなったわけ
んで今から飲み行こうかなーってとこ」


ユーマ…

会わない方がいいのはわかってる
だけど…

「行っていいー?」

「はあ?だめ!今日は男同士で話すから!」

いつもノリでいいくせに…

1人の夜は辛い
少しでも飲みたかった
元々は元彼のために空けていた週末
1人でいると、寂しさが込み上げてくる

「ちぇー
わかりましたよー」

「まあさ!元気出せ!じゃな!」


切れた…

あれ?
なんか用があったんじゃないの?


カイちゃんが私に電話してくることなんて、用がないとない

もしかして大丈夫か聞くため?


カイちゃんは他人に興味示さないし、自分が良ければ他人のことなんて基本どうでも良い


気にしてくれたんだ…
真面目な話が苦手だから、笑いながら聞いてくれたんだ
不器用だけど、根はいい奴…


ぶらぶら歩きながら、人混みへと混ざる
この人たちのうち何人が恋人持ちなんだろう

何人が今、悲しみに包まれていて
何人が、幸せに満ちているんだろう

そんなことを一人問いながら、人混みに紛れてぼーっと歩いて
時間が過ぎていく

空を見ると、薄く黄色がかっていて

もう夕方か…

寒くなってきたし…帰ろうかな

でも帰ったら…また涙を流すのかな


駅のホームに辿り着いたところで、電話が来た
またカイちゃん?

「はいはーい?」

「今どこ?」

「渋谷駅だけど…」

「わお、まじか…
新宿くる?」

「え?」

「いや、なんかユーマと飲んでんだけど、そしたらユーマがマリも呼べば?ってなって」

さっきは男子会だからダメって言ってたのに…
そんなの…

「…行く!!」
に決まってるじゃん!


迷わず新宿へと向かい、カイちゃんたちのもとに向かう
ユーマに会っちゃうからとか、深くは考えなかった

それが全ての始まりになるとは知らずに