悠は抱きしめていた腕を解くと、目を合わせるようにわたしを正面に向き直させた。


「大河と付き合ってて…幸せなん?そんな苦しい思いしてまでも、大河じゃないとあかんの?」


わたしを見つめる、真剣な悠のまなざし。

それを、逸らすことができなかった。


「オレなら、莉子を悲しませへん。そんな泣き顔もさせへん」


まさか、こんなときに悠の気持ちを知ることになるなんて――。


「大河のことは、オレが忘れさせてやるから。やから、オレのところにこいよ」


悠は、兄弟みたいな感覚でしかなかったけど…。


こんな男っぽい顔もするんだ。


わたしはこのとき初めて、悠を異性として意識したのかもしれない。



「返事は今じゃなくていいから。ゆっくり考えて。オレはいつでも、莉子のことを待ってるから」