――しかし。


〈ねぇ、大河〜!まだ〜?〉


大河との電話の向こう側から、女の人の声が聞こえた。

おそらく、野球部のマネージャーの先輩だ。


〈ちょっ…先輩!もうすぐ終わるんで、そんなに引っ張らないでください…!〉

〈だって、大河が遅いのが悪いんやから〜!せっかく早く終わったことやし、これから2人でどっか寄ってく?〉

〈なに言ってんすか!あ、ごめん…莉子。そうゆうことやし、電話切るなっ…〉

〈う…うん――〉


大河はわたしの返事を最後まで聞くことなく、電話を切った。


ツーツーツー…という機械音が、わたしの耳元に虚しく聞こえる。


『引っ張らないで』って、またマネージャーの先輩に気安く触れられてるの…?

断ってはいたけど、先輩の頼みならこのあと2人でどこかへ行っちゃうんじゃないの…?