その言葉を聞いて、穂波は時隆が何を思って、序列を書き記したのか。なんとなくわかった気がした。

「俺はね、藤堂一族の皆を愛してるんだ。愛しくて、好きで、それでいて、憎くて嫌いなんだ」
「時隆様……」

 時隆は、当主として一族を愛していた。けれどその愛は決して純粋なものではなく、屈折して、歪んでいるものだった。

 以前、穂波は時隆の思念で視ている。





『俺は、あの人を奪ったこの家が……藤堂家が憎い』




 こんな一族から、逃げられるものなら逃げたいと、時隆が泣いていた姿を。

 それ以外にも、時隆が死ぬ瞬間の、悲しみと失意にまみれた思いも念力を通して知ってしまっている。

「みんなを困らせてやろうと思ったんだ。殺される予感があったから、その前にあの手紙を遺そうと思った」

 だからこそ、今の彼がどれだけ不安定で、脆い状態なのか。穂波には痛いほどわかってしまった。

「時隆様は、一族を変えたかったんですね」
「……」
「上っ面ばかりで善悪を判断してしまう、藤堂一族のみんなの考え方を変えたかった。それは昔あなたが、大切な人を失くした経験があるから」
「そこまで視てしまったんだね」