もともと書かれる予定のなかった穂波の名前。みんなが当主への適正順だと信じている序列になんの意味があるのか?

 時隆の口元を、穂波はどくどくと胸を高鳴らせながら見ていた。

「あれはね、俺が心配している人の順番かな」
「し、心配……?」

 そして出てきた答えが想像もしていなかった答えで、穂波は思わず声を裏返させるのだった。

「穂波は心配いらないと思ってたから。もともと君は強い子だし、何より椿が居てくれるから。その理由もあって書いてなかったんだけど」
「だからってあの序列のせいで、私は百番目だ百番目だと皆に指をさされ……酷い目に遭いました」
「悪かったよ」

 へにゃりと笑う時隆に、悪びれる様子はない。

「なんでわざわざ全員宛に、序列を書いた手紙を渡して」
「だってみんな、当主への適正順だとか、能力に秀でている順だとかって思うでしょ?」
「そうでしたけど……」

 眉尻を下げて、優しい表情をしていた時隆は、次の瞬間、打って変わって冷たい表情になった。解けていた穂波の緊張感が、再度強まる。

「馬鹿だよね。いつも外面ばっかり気にして、見ようとしなくて」