「穂波様が、戦闘に特化した念力を保たれていたとしても。あなたを現場にお呼びすることは絶対にないでしょう。あなたのことが大切で、傷つけさせたくないのです」
「そんな……」
「穂波様が安全な場所で、帰りを待ってくれている。それが椿様にとって一番の励みになると思いますよ」

 花森はそう言ってくれるが、穂波はまだ地に足がつかないような、落ち着いた気持ちにはなれないでいた。

「椿さんは私のことを想ってくれておりますが、私には椿さんと昔会った記憶がなくて。自分があの方にとって、皆さんが言ってくれるほど大きな存在なのか。実感がないのです」

 穂波にとっての椿の存在は、日に日に大きくなる一方だった。初めて出会った、自分を探し回ってくれていた日も。千代が刺され、澄人との縁も切れた、あの絶望の淵から救い出してくれた時も。もらってばかりだ。

「大きな存在ですよ。椿様の命を、あなたは過去に救っているのですから」
「! 私が……!?」

 ええ、そうですよと花森は頷いた。返し切れない恩があるとは言われたことがあったが……命を救ったなんて、初めて聞いた話だった。

「椿様は穂波様と出会っていなければ昔、命を落とされていたのです。運命の鍵……自分と真反対の念力を持つ少女と出会い救われた。その時からずっとあなたはたった一人の、椿様の特別な存在です」