愛し合っているのに、どうして二人は別れなければならないのだろう。
穂波は二人を見ていて、冷たい針の束が胸に沈んでいくような気持ちになり、奥の歯を噛み締めた。
「そのさ、仕事を辞めて鷹泉から出るって選択肢はないの?」
涼葉もたまらなくなったのか口を開いた。
「一度諜報部に所属したら最後、普通の暮らしには戻れないと聞いたことがあります。国家の重要機密を握っている方々ですから」
「椿に頼んでもらってさ、どうにかしてもらおうよ」
「では涼葉様は、椎菜さんと同じ立場の他の方々が、今回と同じ状況になるたびに全員助けるのでしょうか?」
「! それは……」
涼葉は花森の言葉に、ぐっと言葉を詰まらせた。
「氷宮の皆様は、親切なお人好しでも、何でも屋でもありません。あくまで〝請け負った依頼〟を全うされているのです。氷宮の窓口と御意見番が認めた正式な依頼を」
花森はいつもより強い語気で、涼葉にそう言った。涼葉様ならよくお分かりでしょうと、最後に付け足した言葉の色は優しかったが。長く仕えてきた花森にとっても、氷宮の仕事の伝統と誇りは大切なものなのだろう。
穂波は二人を見ていて、冷たい針の束が胸に沈んでいくような気持ちになり、奥の歯を噛み締めた。
「そのさ、仕事を辞めて鷹泉から出るって選択肢はないの?」
涼葉もたまらなくなったのか口を開いた。
「一度諜報部に所属したら最後、普通の暮らしには戻れないと聞いたことがあります。国家の重要機密を握っている方々ですから」
「椿に頼んでもらってさ、どうにかしてもらおうよ」
「では涼葉様は、椎菜さんと同じ立場の他の方々が、今回と同じ状況になるたびに全員助けるのでしょうか?」
「! それは……」
涼葉は花森の言葉に、ぐっと言葉を詰まらせた。
「氷宮の皆様は、親切なお人好しでも、何でも屋でもありません。あくまで〝請け負った依頼〟を全うされているのです。氷宮の窓口と御意見番が認めた正式な依頼を」
花森はいつもより強い語気で、涼葉にそう言った。涼葉様ならよくお分かりでしょうと、最後に付け足した言葉の色は優しかったが。長く仕えてきた花森にとっても、氷宮の仕事の伝統と誇りは大切なものなのだろう。