人混みにまぎれてはぐれてしまったのかと、キョロキョロあたりを見回してみる。

その時だった。

「あれ…?季里ちゃん…?」

不意に自分の名前を呼ばれ、私は声のする方向にパッと顔を向ける。

「…え?遥奈先輩…?」

「やっぱり、季里ちゃんだ!偶然だね!!」

私と目があった瞬間、パァッと表情を明るくした遥奈先輩が私に駆け足で近づいてきた。

「季里ちゃんも買い物?じつは今日私一人なんだ〜!よかったらあとでお昼ご飯でもどう??」

「せ、先輩。ちょっと落ち着いて…!」

先輩のテンションについていけず、あわあわと答える私。

「あ、ごめん…!まさか季里ちゃんに会えると思ってなかったから嬉しくて…えへへ。季里ちゃんもひとりで来たの??」

「あ、私は…」

「僕といっしょだけど?」

…!?

私の腕をギュッと掴み、にこやかな笑みを浮かべているのは今まで姿が見えなかった充希くんだ。

手には、すでにいくつかのショップの紙袋が握られており、あの短時間で店をはしごしていたのかと驚愕した。