「ふふ。なんか変な感じだね!えっと…颯真くん…だとあれかな?呼び方は久瀬先輩のほうがいいよね?じゃあ、久瀬先輩これから改めてよろしくお願いします…!」
「あぁ…、こっちこそ。じゃ、また学校でな」
「うん。気をつけて帰ってね…!」
最後にそう言葉を交わし、心音ちゃんを背負う颯真くんの背中を見送った。
そして、その姿が完全に見えなくなった頃。
ーーカラン、カラン。
『フレーズ・デ・ボワ』のドアが突然開き、顔をのぞかせたのは充希くんだった。
「わっ!なんだ季里か…びっくりさせないでよ。不審者かと思ったじゃん。てか、そんなところで立ちっぱなしで何して…」
「あ、充希くん…ただいま」
「おかえり…って…は?ど、どうしたの?何で泣いて…」
充希くんの姿を見た瞬間、なぜかポロッとこぼれおちた涙。
「…ッ」
おろおろして駆け寄ってきた充希くんに何か言わなくちゃと、頭ではわかっているのに。
どうしてもこぼれ落ちる涙を止めることができなかったんだ。