教えた覚えはない。

そもそも元カレがいたって話もしたことないような…。

「あのさぁ、依里を呼び捨てにしないでくれるかな、何の関係もない他人の君が」

「ひっ…」

後ろを向いている晴人さんの顔は見えないが、まさるは怯えた顔で走って逃げて行った。

「あ、あの…」

「あぁ、災難だったね。依里ちゃん、大丈夫だった?」

「は、はい、晴人さんがいてくれたので…。

あのっ、さっきみたいに私のことは呼び捨てにしてください」