空港に向かう間に父さんから電話があった。

『愛した女に逃げられるなんて、お前は甘すぎだ。

仕事の方は何とかしといてやるから、さっさと連れ戻すことだ』

「はい…」

父さんも母さんを溺愛し、軟禁していることもあって俺の気持ちを察してくれたようだ。


飛行機に乗っている間、一睡もできず食欲もない。

目的地について、とりあえずホテルへ向かう。

五つ星ホテルの、最上階の部屋。

依里もいつか連れてこようと思っていたのに。

「依里がいないなら、どれも無価値だ」

早く連れ戻して、どこかに閉じ込めておかないと。