わかっている。これからは全部俺次第だ。
先輩が引き摺ろうが諦めようがもうしばらく恋愛は休止しようが俺には関係ない。

浦野に負けるくらいならしょうがないと思うけれど、浦野以外のやつに撮られるのだけは御免だ。それくらいなら、意地でも忠犬の立場を手放すつもりはない。




数か月前の俺は今の俺を見て笑うだろう。
恋なんてめんどくさくてダルいどうでもいい感情は、どうやらここで出会った頭の可笑しいセンパイに教えてもらってしまったらしい。
そこで交わした賭けも約束も、勝ち目はないし守ることもできないからとっとと離れたほうが楽だぞ、って今の俺からのアドバイスを送ろう。





昼休みが終わる10分前に浦野は豚カルビ丼大盛りの袋を下げて帰ってきた。
そこで我に返った俺は、もう30分も彼女のそばにいたことをしっかりと浦野にいじられることになる。



「もうなんでもいいっすよ、認めたもん勝ちだと思うんで」

「おー、それは勝ったな」

「うっざ、アンタに勝ち目ないのに煽らないでください」

「吉野、お前もっとかっこよくなったな」

「うざい」

「結局はな、素直で従順な男のほうがいいとぞ」

「先生にだけは言われたくないです、黙って見守って」

「はいはい、吉野璃月はもう女の子と遊ばないらしいって噂だけそこら中に広めといてやるよ」

「それはマジでお願いします」



失恋した女の子の弱みに付け入るのが一番手っ取り早いと俺の兄貴が言っていたことを思い出して、しっかりとその戦略を使っていくつもりだ。

俺も好きになるつもりがなくて、向こうにもそのつもりがないんだ。
俺が間違って好きになってしまったんだから、向こうにも間違いが起きたっていいじゃないか。




向こうが俺のことを道連れにしたんだから、
今度は俺が、先輩を道連れにしてやるのだ。



「頑張れよ、クソガキ」

「もうその言葉言わせないっすから」