ベッドに肘をつくようにしゃがみこんだ。
視線を先輩と同じ高さにしたかったのは、先輩の逃げるような表情を逃したくなかったからだ。
先輩は俺の視線から逃げない。はは、とちっとも面白くないのに笑って見せて、それから自分の目尻を擦った。
「よく見てるなあ、さてはわたしが寝てるうちに手でも出そうと思ったのかい?」
「残念ながら一ミリも」
「はは、そりゃあ残念」
「…噂、聞いたんすよね」
ちっとも読めない本音は、どうやったら崩れるのか。
余裕にしているのがムカつくし、知らんふりして逃げようとしているのもムカつく。
「遥平くんの結婚のはなし?」
「………」
「璃月も知ってたんだ」
「……俺は、いち早く教えろって脅してたんで」
「なにそれ、わたしもすればよかった」
「……なにしょげてんの、」
「なあに、慰めてくれるの?」
「……へらへらしないでください」
自然と手が伸びた。一応、緊張はしている。
真っ白な肌に手を伸ばす、頬をつまんで、思い切り引き延ばしてやった。
思わず顔をしかめたセンパイに、ようやく満足する。もっとひどい顔してしまえばいい。
「怒れよ、」
「……」
「文句言えよ、縋れよ。本人の口から一番に聞きたかったって言える立場にいるじゃないですか、なに笑っておめでとうとか言ってんの」
「……璃月、」
「変わらず好きな人がいても、あなたのことが昔からずっと好きだったんだって言って、早く振られちまえよ」