「優しいところもあるんだ」

「優しいところしかないっすよね」

「はは、いつもの璃月だ」


笑っているけれど、やはり体調はあまりよくないのだろう。
無理矢理笑っているような気がした。俺なんかに気使ってんじゃねえよ。


「頭ちょっと浮かせてください」

「自分でできるよ?」

「はやく」


先輩を見下ろす形になって変に緊張した。
真下から先輩は俺を見てけらけらと笑った。「璃月が優しいと、調子狂う」と言って遠慮なしに俺に手を伸ばしてきた。
前髪にそっと触れた指先が、わしゃわしゃと俺の髪の毛を崩す。思わず目を瞑れば、いたずらっ子のような笑みでこちらを見ていた。


「かわいいなあ、コーハイ」

「年上だからって、バカにすんなよ」

「わー、こわいこわい」


俺が簡単に手を出せないことをわかっているくせに、平気で触れてこないで欲しい。
離れていく指先はシーツに無気力に落ちていく。俺は大人しく先輩から離れる。


「つらい、ですか」

「薬飲んだからだいぶましだよ」

「体調、じゃなくて」

「………」

「一人で泣いてたくせに」