「……莉子センパイ、泣いてました?」

「全く。無理してたけどね」

「女の子は失恋したとき泣くんじゃないんですか?」

「泣くんじゃない?でも、誰かの前では泣けないよ」



弱みなんて簡単に見せられないんだよ、
莉子はいつも、人に心配ばかりかけてるって、無理してすぐ誤魔化すんだもの。

そういうとこ一線弾くから、私くらいしか友達いないのよ、あの子。なんて言って、センパイの友達は笑った。



「ねえコーハイ、様子見てきてもらってもいい?」

「……なんで俺が」

「わたしには莉子にかける言葉がわからないけど、璃月クンならデリカシーゼロで莉子につっかかれるじゃん」

「俺が悪役ってことすか」

「うん、でもキミも早く莉子のとこ行きたいって思ってるでしょう?」


ペンケースを持っている右手に相当な力がこもっていたみたいだ。シリコン製のペンケースは握力で不格好に歪んでいる。

俺はただ、一人でめそめそ泣いてるところを目撃して何なら笑い飛ばしてやろうと思っているくらいだ。
まあどうせちっとも泣こうとなんてしないんだろうけど。だったらボロボロにして泣かせてやればいいのだ。



「先輩の心配だけ持って、俺は煽りに行きます」

「いってらっしゃい、まあ元気そうだったらまた教室まで送ってあげてよ」

「気が向いたら」

「そうやっていつも気が向いてるんだから、忠実なコーハイね」



3年生に手出すのやめたらしいけど、それって莉子と関係あったりして?
知らないふりして結局全部知っているセンパイの友達は、にやにやと俺の様子を見て笑っている。

誰だよ、俺が3年の先輩に遊ばれてるってデマ流したやつも。おかげで吉野璃月は誘いに乗らないって言われるし、まるで俺が莉子センパイに振り回されてるみたいじゃないか。



「……違います、暇つぶしだし」

「莉子と過ごせる暇つぶしなんて最高じゃんね」

「……もう否定するのもメンドイんですけど」

「素直に生きてこうな、ショーネン」