ついに、廿楽くんが席を立った。



「っ…」



もう、限界。



目からとめどなく溢れてくる涙が、制服にぽたぽたと落ちていく。



顔なんて上げられない。



ただ廿楽くんがこの図書室から出ていくのを、泣きながら待っているしかないんだ。



………そう、思っていたのに。



「…ごめん、心優。お願いだから怒らないて」



「…っ!?」



悲しそうな声が、図書室に響いた。



私よりも高い体温が背中越しに伝わってきて、脈が速くなるのを感じる。



後ろからぎゅうっと抱きしめられて、涙がピタッと止まった。