もう、このまま溶けてしまうんじゃないかと本気で思った。
耳にかかった吐息と、低くて甘いテノールが私をおかしくさせる。
「心優が顔赤くなってるとこ見るの…好き」
ふにゃりと笑って、顔をほころばせる廿楽くんにぎゅっと心臓を鷲掴みにされた。
「っ…ね、寝ぼけてるでしょ…っ」
普段は絶対こんなこと言わないもん。
寝ぼけてるときとかって、本音が出るとかよくいうけれど。
っ…ないない、ありえないから。
廿楽くんに限って、そんなことあるはずがない。
上げて落とすのが廿楽くんだ。
この後きっと、意地悪なことを言ってくるはず。
……なのに。
「…僕の好きは、心優の負担になる…?」
「っ、え…?」
熱を帯びた視線。
「…心優が好き。ずっと、心優だけが好きだよ」
あまりにもストレートな言い方が、私の感情を一気に引き上げた。