さすがの廿楽くんでも、こんなところにいるわけな……。
「──っえ…!?」
驚きのあまり大声を出しそうになって、咄嗟に口を手で覆った。
う、うそ……。
そこには、スースーと静かに寝息を立てている廿楽くんの姿があって。
汚れることも気にせず、コンクリートの上で気持ちよさそうに寝ていた。
それにしても、本当に綺麗な顔だなぁ…。
まるで眠り姫のように美しい廿楽くんに、目を奪われてしまう。
私は廿楽くんのそばに寄って、なるべく起こさないように腰を下ろした。
…寝てるのを邪魔する訳にも行かないし…どうしよう?
せっかく明楽先輩が背中を押してくれたし、このまま帰るのも違う気がする。
だからといって、あの話をどう切り出せばいいのかもわからない。
「…髪、くすぐったそう」
風に揺れたサラサラな栗色の髪が、廿楽くんの目にかかった。