やっと近づけていた心の距離が、一気に離された感覚。
そして、最後にとどめを刺したのは。
「…どーせ僕は、なにも持ってないから…」
今までの中で1番意味深で、聞いているこちらが悲しくなるようなセリフ。
「な……んで、そんなこと…」
やっと言葉を発せた時には、廿楽くんはまどろみの中にいた。
っ…廿楽くんは、誰と何を比較しているの…?
廿楽くんの言葉が、耳にこびりついて離れてくれない。
そんな時、ポケットに入れてあったスマホが振動した。
膝の上の廿楽くんを起こさないよう、ゆっくり取り出す。
相手は明楽先輩だった。
『ほんっとーにごめん…!!ちょっと遅くなるかもだから、廿楽くんと先に帰ってて!』
え、明楽先輩大丈夫かな…?
『今日は楽しかったよ。付き合ってくれて本当にありがとう。廿楽くんにも、ありがとうって伝えておいて欲しいな』