そんなふうに思ってくれているだけでも充分だ。
「…私は全然大丈夫だよ?ちょっと疲れちゃったしね」
だからそう言うと、廿楽くんは躊躇いがちに私を見た。
「…そう?」
「うん…!」
「じゃあ…心優の膝貸して」
「う…って、え?」
“膝貸して”…??
今頷きかけたけど…まさか、アレのことを言ってる…?
嫌な予感がして廿楽くんに聞こうとしたけど、既に遅かった。
「っ…!!」
さらさらとした栗色の髪が膝にあって、廿楽くんと目がバチッと合う。
まだ何も言っていないのに、こんな公衆の面前で膝枕をしてしまった。
ゆっくりと口を開く廿楽くんが何を言うのか固唾を飲んでいると。
「…心優の膝って、柔らかいよね」
「それは太ってるってことでしょうか?」
あまりにもデリカシーのない物言いに、恥ずかしさなんてものは吹っ飛んでいったらしい。