「…行ってくれば?」
なんの感情もこもっていないような、抑揚のない声。
私を一切見ずに、そっぽ向いたまま言った。
っ…馬鹿だ、私。
勝手に期待して、勝手に傷ついて。
最近距離が近づいた気がして、勘違いしていたのかもしれない。
どれだけ恥ずかしい思い違いをしていたんだろう。
「…ごめんね、心優ちゃん」
ボソッと、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声が耳元で聞こえた。
「え…っ?」
「じゃ、ちょっと心優ちゃん借りるよ。そこら辺で適当に待ってて」
私が戸惑っているうちに、気がつけば明楽先輩に手を引かれて歩いていた。
「せ、先輩っ…?どこに行くんですか…!」
「んー?景色がいいとこ!」
景色がいいとこって……。
あっ…もしかして、あそこのこと?
帰りに乗りたいなぁとは思っていたけど…。
「お、今なら待たないで乗れるってよ?ラッキーだね」
先輩とやってきたのは、カラフルなゴンドラがクルクルと回っているアレ。
「さらってきて言うのもなんだけど…観覧車、一緒に乗ってくれる?」
キラキラと光る大きな観覧車だった。
***