確かに時計を見ると、あと10分くらいで担任の先生が教室に来る時間だった。



でも、このまま一緒に教室に行ったら廿楽くんに会ってしまうかもしれない。



誤解されたくないから、ジリ…とうしろに下がって逃げようとしたんだけど。



「はい、捕まえた。これで逃げられないね?」



ニヤリと笑った明楽先輩に捕まって、強制連行されてしまった。



だ、誰か助けてください…!!



そんなことを叫ぶ暇もなく、大人しく明楽先輩に送られている。



強制連行って、こういうことを言うんじゃないのかな…。



階段を下りているこの時間さえもが長く感じて、早く誰にも見られないように教室に入りたいと思っていたら。



「あ、廿楽くんだ。おはよ〜」



「………」



「あ、聞いてよ廿楽くん。心優ちゃんね、わざわざパーカー返しに来てくれたの。優しいよね〜?そーゆとこ、本当大好き」