自分から聞いておいてその反応って…。




やっぱり、あの人だ。




そう確信して続けた。




「…廿樂くん、だよね。今さっき気づいたけど」




今度はまっすぐ目を見て言うと、彼はずっと変えなかった表情を大きく変える。




目をまん丸にして大きく見開いたその顔は、多分普段お目にかかれない表情なんだと思う。




「…よくわかったね。僕の名前」




「そりゃ、有名人ですから。名前くらいは聞いたことあるよ」




もちろんといったふうに返したときには、もうさっきの無表情よりちょっとだけ砕けた顔に戻っていた。