エツの帰国はそれから二週間後に決まり、あちらの状況が落ち着いてきてからは毎日連絡を取っていた。彼の上司も無事復帰して、街も徐々に日常を取り戻し始めているらしい。

 六月中旬の今日、やっと帰国する彼を迎えに私は羽田空港へ向かう。電車に揺られている最中、なんとなく見ていたネットニュースにフランスの記事が載っていた。

 フランスの要人方が、今回の災害で各国からいただいた支援に感謝しているという内容だったのだが、ラヴァルさんの名前とともに書かれていた彼のコメントが目に留まる。


【私の友人のひとりでもある外交官が、自国民だけでなくフランスの市民も助けてくれていて、その行動に感激しました。温かい手を差し伸べてくださった、すべての皆様に敬意を表します】


 実はつい二日前、ひぐれ屋にラヴァルさんから電話がかかってきた。『エツトに〝カエさんの番号を教えて〟って言い終わる前に断られちゃって。でも、ひぐれ屋に電話するなら問題ないよね?』とのこと。

 その時もこのインタビュー記事と同じように、エツがどの国の人だろうと関係なく手を貸している姿に感銘を受けたと話していた。