「日本人が安否不明だってニュースで流れてたから心配してたの。無事でよかった」
『心配かけてごめん。観光客が巻き込まれたらしいが、無事が確認できたよ。こっちに着いて早々大雨になって大変だった。今夜はやっとホテルで寝られそうだ』


 領事館に泊まり込むほど忙しかったんだ。連絡できなかったのも無理はない。

 どうか身体も大事にしてほしいと思いつつ、「本当にお疲れ様」と労った。


『今回、被災した人たちを見て改めて感じたよ。いつなにが起こるかわからないから、大切な人と一緒にいられるならそうするべきだって』


 彼はどことなく真剣な調子になり、私もしっかりと耳を傾ける。日本を経つ前に、ラヴァルさんとした話と繋がっているのだろう。


『俺はこの仕事を辞めるつもりはない。こっちにも仲間がいるし、困っている人もたくさんいて、そういう人たちの力になりたいと思ってる』
「うん」
『でも、俺が彼らを助けてやれるのはその一時(いっとき)でしかない。一生、自分の手で守っていきたいのは花詠だけだ』


 クレベール広場で会った警察官の友人や、領事館で働く仲間。エツの大切な人はこれからも行く先々で増えていくだろう。その中で、私は特別なのだと言ってくれている。


『だから、どこまでもお前を連れていく。俺のわがままを許してほしい』