彼はお婆さんだけでなく周りの人も気遣い、励ましているように見える。服は泥や埃で少し汚れていて、手助けしていたのが今だけではないのが見て取れる。

 彼のその凛々しい表情に、胸が熱くなる行動に、感極まって涙が溢れた。

 映っていたのはほんの十数秒、彼に視点を当てたわけではなかったにもかかわらず、その姿を見つけられたのは奇跡に近い。

 領事館での対応もかなり忙しいはずだし、これは外交官の仕事の範疇を超えている。きっとただ助けたいという気持ちで、自分より困っている人を優先したのだろう。

 無事だった……本当によかった。こうしている今も、彼は誰かのために尽力しているに違いない。

 口元を片手で覆って泣く私に、母が優しく微笑みかける。


「なんとなく気づいてたわよ、花詠が悦斗くんを好きなこと」
「ふぇ……?」
「と言っても、彼がひぐれ屋に来るようになってからだから最近だけどね。あんたの顔を見てて、そうじゃないかってピンときたの。実はこんなに思いやりがある素敵な人なんだから、惚れないはずがないわよね」


 うそ、バレていた? エツはともかく、私は全然親密さを隠せていなかったってことか!