クスクス笑う玲香は感慨深げなため息をつき、『外交官の妻になるのか~』とひとりごつ。


『もし花詠がどこに行っても、私なら会いに行けるわね。またステイ中に一緒に観光できるって思うと楽しみ』


 明るい声が耳に届き、斜め上の考え方に胸がじんわりと温かくなる。

 玲香も世界各国を飛び回っているひとりだ。私が海外へ行ったとしても友人に会えると思うだけで、とても心強い。

 彼女の前向きな言葉が嬉しくて、「ありがとう」と心からお礼を言った。


『そういえば、ストラスブールが大変なことになってるじゃない。現地の人たちは気の毒だけど、婚約者さんは日本に戻ってる時でよかったわね』


 声色が真面目なものになると共に話題も変わり、私は「あ、うん」と煮えきらない返事をする。


「それが、向こうの領事の人も被災しちゃったみたいで、今彼が助っ人に行ってるの」
『そうなの!? 今、大雨でさらに被害が広がってるらしいわよ』
「えっ?」


 うそ……朝のニュースではそんなこと言っていなかったのに。玲香が航空関係者だからこそ知っている最新の情報かもしれないが。

 急に胸がざわめきだし、言葉が出てこない。私の気持ちを察してか、玲香は落ち着いた声を投げかける。