この日、エドガールが二度目となるルノアール邸への訪問をしていた。
クラリスは淡いブルーのスカートをなびかせて、エドガールにカーテシーで挨拶をする。
「やあ、今日は君が紅茶が好きだと聞いてね、持参したんだ」
「ええ、紅茶は好きです」
「よかったよ」
そういってクラリスの自室に入るエドガール。
事前に頼んでいたのか、メイドが「失礼します」と入室して紅茶の準備をする。
「エドガール様、こちらへどうぞ」
「ああ、すまない。ありがとう」
クラリスはエドガールをテーブルに案内する。
やがて、室内に紅茶の香りが漂ってくる。
「いい香りですわね」
「そうだろう、人気のハーブティーと聞いたんだ」
紅茶を入れ終わると、一礼してメイドが部屋から出ていく。
二人きりになったところでようやくという感じでエドガールは話を始めた。
「あれからどうだい? ジェラルドのことは忘れて元気に過ごせているかい?」
「え、ええ」
(この鼻に着くきつい紅茶……少し苦手だわ。ジェラルド様ならいつも優しい香りのアールグレイを入れてくださるのに)
そんなことを考えていると、上の空だと気づいたのかエドガールが目を細めて言う。
「まだジェラルドのことを想っているみたいだね」
「え?」
「ジェラルドは君を邪魔扱いしていたよ、仕事の邪魔をするだけの女だって」
(ジェラルド様がそんなこと……)
氷雪令嬢である彼女の仮面が崩れ始め、唇を噛むだけでは抑えきれずに目尻に涙をためてしまう。
エドガールからの視線に耐え切れず、紅茶に目を移すもティーカップが滲んでゆがみうまく見えない。
その瞬間、にやりと彼は笑っていた。
そして、そのままクラリスの腕を引くと、そのまま近くに会ったベッドに押し倒す。
「──っ!」
「【氷雪令嬢】とも呼ばれるクラリス嬢のそんな表情を見れるなんて最高の景色だよ」
「離してっ!」
「ジェラルドにもそんな女の顔を見せていたのか?」
「……」
クラリスは逃れようとするも、男の力には抗えずに組み敷かれるままだった。
「あいつもバカだよな、ちょっと君が邪魔だと吹き込んだだけで本当に婚約破棄してしまうなんて」
「……なんですって? あなたが『私が邪魔になっている』といったの?」
「ああっ! 好きなのに婚約破棄するバカがどこにいるのかと思ったが、あそこまでだとは! 君と婚約破棄したおかげであいつは余計に調子が狂って公務でも失敗続き」
「それを狙ってやったの?」
「ここまでうまくいくとは思わなかったけどね! まあ、この失敗続きなら次の王候補は僕だろうね」
「──っ!」
クラリスは縛り付けられた手を必死に払いのけると、右手で勢いよくエドガールの頬を叩いた。
「そんなことで殿下を苦しめるなんて許せないっ!」」
「このっ!!」
「きゃっ!」
自分の頬を叩いたクラリスに腹を立てたエドガールはクラリスの頬を叩き返す。
その頬は赤く腫れ、クラリスは痛みで顔を歪めた。
しかし、それにとどまらずまた手をあげるエドガールに、クラリスは目をぎゅっと閉じる。
(殿下……っ!)
心の中でジェラルドの姿を思い浮かべていたクラリスに、エドガールからの暴力はいつまでたってもこなかった。
不思議に思ったクラリスが目を開くと、そこにはエドガールのあげた手を強く掴んで鬼のような形相で彼を見つめるジェラルドがいた。
「ジェラルド殿下……」
「エドガール、君のおかげで目が覚めたよ。何を守るべきなのか」
ジェラルドはエドガールを深く蔑んだ目で見つめていた──
クラリスは淡いブルーのスカートをなびかせて、エドガールにカーテシーで挨拶をする。
「やあ、今日は君が紅茶が好きだと聞いてね、持参したんだ」
「ええ、紅茶は好きです」
「よかったよ」
そういってクラリスの自室に入るエドガール。
事前に頼んでいたのか、メイドが「失礼します」と入室して紅茶の準備をする。
「エドガール様、こちらへどうぞ」
「ああ、すまない。ありがとう」
クラリスはエドガールをテーブルに案内する。
やがて、室内に紅茶の香りが漂ってくる。
「いい香りですわね」
「そうだろう、人気のハーブティーと聞いたんだ」
紅茶を入れ終わると、一礼してメイドが部屋から出ていく。
二人きりになったところでようやくという感じでエドガールは話を始めた。
「あれからどうだい? ジェラルドのことは忘れて元気に過ごせているかい?」
「え、ええ」
(この鼻に着くきつい紅茶……少し苦手だわ。ジェラルド様ならいつも優しい香りのアールグレイを入れてくださるのに)
そんなことを考えていると、上の空だと気づいたのかエドガールが目を細めて言う。
「まだジェラルドのことを想っているみたいだね」
「え?」
「ジェラルドは君を邪魔扱いしていたよ、仕事の邪魔をするだけの女だって」
(ジェラルド様がそんなこと……)
氷雪令嬢である彼女の仮面が崩れ始め、唇を噛むだけでは抑えきれずに目尻に涙をためてしまう。
エドガールからの視線に耐え切れず、紅茶に目を移すもティーカップが滲んでゆがみうまく見えない。
その瞬間、にやりと彼は笑っていた。
そして、そのままクラリスの腕を引くと、そのまま近くに会ったベッドに押し倒す。
「──っ!」
「【氷雪令嬢】とも呼ばれるクラリス嬢のそんな表情を見れるなんて最高の景色だよ」
「離してっ!」
「ジェラルドにもそんな女の顔を見せていたのか?」
「……」
クラリスは逃れようとするも、男の力には抗えずに組み敷かれるままだった。
「あいつもバカだよな、ちょっと君が邪魔だと吹き込んだだけで本当に婚約破棄してしまうなんて」
「……なんですって? あなたが『私が邪魔になっている』といったの?」
「ああっ! 好きなのに婚約破棄するバカがどこにいるのかと思ったが、あそこまでだとは! 君と婚約破棄したおかげであいつは余計に調子が狂って公務でも失敗続き」
「それを狙ってやったの?」
「ここまでうまくいくとは思わなかったけどね! まあ、この失敗続きなら次の王候補は僕だろうね」
「──っ!」
クラリスは縛り付けられた手を必死に払いのけると、右手で勢いよくエドガールの頬を叩いた。
「そんなことで殿下を苦しめるなんて許せないっ!」」
「このっ!!」
「きゃっ!」
自分の頬を叩いたクラリスに腹を立てたエドガールはクラリスの頬を叩き返す。
その頬は赤く腫れ、クラリスは痛みで顔を歪めた。
しかし、それにとどまらずまた手をあげるエドガールに、クラリスは目をぎゅっと閉じる。
(殿下……っ!)
心の中でジェラルドの姿を思い浮かべていたクラリスに、エドガールからの暴力はいつまでたってもこなかった。
不思議に思ったクラリスが目を開くと、そこにはエドガールのあげた手を強く掴んで鬼のような形相で彼を見つめるジェラルドがいた。
「ジェラルド殿下……」
「エドガール、君のおかげで目が覚めたよ。何を守るべきなのか」
ジェラルドはエドガールを深く蔑んだ目で見つめていた──