クラリスはジェラルドに婚約破棄された日からずっと気分が落ち込んでいた。
(はあ……立ち直らなければと思うのに、大好きな本も読めないわ)
本のページを右へめくったり、左へめくったりしながらそわそわして落ち着きがない。
なにをしていてもジェラルドのことを考えてしまうクラリスは、本をそっと閉じて窓の外を眺める。
外には綺麗なバラの咲き誇る庭園があり、クラリスの癒しになっていた。
すると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてくる。
「はい」
「失礼します」
そこにはクラリス専属のお世話役のメイドがいた。
「クラリス様、第二王子のエドガール様がお見えです」
「エドガール様が? なんの御用でしょう」
「お通しして大丈夫でしょうか?」
「ええ、構わないわ」
メイドは丁寧にお辞儀をすると、ドアを一旦閉じて玄関へと向かった。
(エドガール様がうちに何の御用かしら?)
そう思っていると、メイドに案内されてエドガールがクラリスの自室へとやってきた。
「やあ、元気にしてるかい?」
「エドガール様、ごきげんよう」
メイドは頭を下げて去っていく。
それを確認したエドガールはクラリスに近づいていった。
「クラリス」
「ええ、なんでしょうか」
距離をつめてクラリスの手をいきなり掴むエドガールに、クラリスは拒否感を覚える。
(なにこの馴れ馴れしい感じ、不愉快……)
「ジェラルドと婚約破棄をしたと聞いたよ、大丈夫かい?」
「ええ、そうです」
「可哀そうに、ジェラルドに邪見に扱われて寂しかっただろう。これからは僕を頼るといい。君のためならなんでもするよ」
「そうね、何かあったら頼らせていただきますわ」
エドガールはそっとクラリスの手の甲に唇をそっと置くと、そのまま彼女の顔を見つめて微笑む。
「──っ!」
いきなりのエドガールの行動にわずかに表情を変えて驚く。
そのまま彼はにこりと微笑みかけると、持っていた小包を渡した。
「これ、よかったらお近づきの印に」
「ええ、ありがとう。いただくわ」
クラリスは両手で花束を受け取ると、いつも通りの【氷雪令嬢】の素振りで返答を返す。
「じゃあ、今日は挨拶だけだから、また来るよ」
「かしこまりました」
そういって、エドガールは得意げな顔を浮かべながら部屋を去っていく。
去り際もクラリスのほうを振り返り、片目を閉じて合図をする。
その合図にそっとお辞儀をして返すクラリスは、エドガールが去ったあとにふと表情が和らいだ。
(エドガール様は紳士的なお方なイメージだったけれど、少し印象が違ったわね)
花束をそっと机の上におくと、その黄色い花びらを細い指でそっとなでる。
「私は花束より庭にある自然な花が好きだわ」
その呟きは誰の耳にも届いていなかった──
(はあ……立ち直らなければと思うのに、大好きな本も読めないわ)
本のページを右へめくったり、左へめくったりしながらそわそわして落ち着きがない。
なにをしていてもジェラルドのことを考えてしまうクラリスは、本をそっと閉じて窓の外を眺める。
外には綺麗なバラの咲き誇る庭園があり、クラリスの癒しになっていた。
すると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてくる。
「はい」
「失礼します」
そこにはクラリス専属のお世話役のメイドがいた。
「クラリス様、第二王子のエドガール様がお見えです」
「エドガール様が? なんの御用でしょう」
「お通しして大丈夫でしょうか?」
「ええ、構わないわ」
メイドは丁寧にお辞儀をすると、ドアを一旦閉じて玄関へと向かった。
(エドガール様がうちに何の御用かしら?)
そう思っていると、メイドに案内されてエドガールがクラリスの自室へとやってきた。
「やあ、元気にしてるかい?」
「エドガール様、ごきげんよう」
メイドは頭を下げて去っていく。
それを確認したエドガールはクラリスに近づいていった。
「クラリス」
「ええ、なんでしょうか」
距離をつめてクラリスの手をいきなり掴むエドガールに、クラリスは拒否感を覚える。
(なにこの馴れ馴れしい感じ、不愉快……)
「ジェラルドと婚約破棄をしたと聞いたよ、大丈夫かい?」
「ええ、そうです」
「可哀そうに、ジェラルドに邪見に扱われて寂しかっただろう。これからは僕を頼るといい。君のためならなんでもするよ」
「そうね、何かあったら頼らせていただきますわ」
エドガールはそっとクラリスの手の甲に唇をそっと置くと、そのまま彼女の顔を見つめて微笑む。
「──っ!」
いきなりのエドガールの行動にわずかに表情を変えて驚く。
そのまま彼はにこりと微笑みかけると、持っていた小包を渡した。
「これ、よかったらお近づきの印に」
「ええ、ありがとう。いただくわ」
クラリスは両手で花束を受け取ると、いつも通りの【氷雪令嬢】の素振りで返答を返す。
「じゃあ、今日は挨拶だけだから、また来るよ」
「かしこまりました」
そういって、エドガールは得意げな顔を浮かべながら部屋を去っていく。
去り際もクラリスのほうを振り返り、片目を閉じて合図をする。
その合図にそっとお辞儀をして返すクラリスは、エドガールが去ったあとにふと表情が和らいだ。
(エドガール様は紳士的なお方なイメージだったけれど、少し印象が違ったわね)
花束をそっと机の上におくと、その黄色い花びらを細い指でそっとなでる。
「私は花束より庭にある自然な花が好きだわ」
その呟きは誰の耳にも届いていなかった──