「……嘘でしょ……」


それってつまり、幽霊だ。
絶対に幽霊だ、間違い無い。幽霊が泣いてるんだ!


——リン、


「きゃ‼︎」


鈴の音と共にどこかの草むらがガサッと動いて、思わずその場に尻餅をついてしまった。心臓がバクバクいって、全身に血が巡る。変に力が入って身体が硬るせいで、すぐに立ち上がる事が出来ない。

……でも今、リンって鈴の音が鳴った。この音は猫さんだ。猫さんの首輪の鈴だ。近くに猫さんが居るに違いない。


驚いた余韻から少し震える身体でなんとか立ち上がり、音がした方へゆっくり進む。すると、泣いている声がますます大きくなって、段々声の元へ近付いている事が分かった。怖くて今すぐやめたい。でも、リンと、時折鈴の音が混ざる。そこに黒猫が居るのだと思えば、向かうしかない。

大きな木の裏。死角になったそこに、居た。


「ぐすっ、ぐすっ」


しゃがみ込んだ、小さな男の子。ぐすぐすと鼻を啜りながら肩を揺らし、俯いている。男の子の足元にあるのは、鈴のついた千切れた首輪。


「こ、れ……猫さんの……」


私の声に、男の子が顔をあげた。涙でいっぱいになったまん丸の瞳と目が合った。