「クロは、淋しくないかい?」



 ある晴れた夜。

 さくは突然そう言った。

 雲一つない夜だった。


 でも明るくはない。


 お月様がどこにも居なかった。


 ……さびしいってなに?


 僕はさくに聞き返していた。
 いつも教えてくれるさくが
 初めて僕に聞いてくれた。



 それが、何を意味するのか。



「淋しいっていうのはね――」



 かさが空を向いた。

 月も星もない夜に、初めてさくはかさから抜け出した。



 それが、何を意味するのか。



 明るい夜。
 明かりもないのに明るい夜。
 さくの微笑みはとても綺麗で
 とても明るかった。



 それが、何を意味するのか。



「淋しいってことはね――」



 さくは笑っていた。

 さくは教えてくれた。


「独りはイヤだよって」


 さくは、いつも答えてくれた。


「みんなに、伝える思いだよ」


 なんとなく。

 それが、何を意味するのか。

 わかった気がした。