帰る支度をしていると、中二の夏くらいから仲良くなって今ではずっと一緒にいるくらい仲のいい親友、中須咲那(なかすさな)が駆け寄ってきた。



咲那はぱっちり二重にふわふわに巻いたキャラメル色の髪、小さな身長は小動物みたいでとても可愛い。


女の私から見ても咲那の笑顔は惚れるくらい魅力的だ。



「咲那、たしか数学のプリントやってから帰らなきゃじゃなかった？」


「…は！そうだ！忘れてた！」



咲那は今日提出の数学の宿題を忘れてしまい、プリントをやって放課後までに出すようにと先生に言われていたことを忘れていたみたいだ。


中三の六月はまだ通知表の心配をしないといけない季節で、そういう小さな積み重ねが後々自分を苦しめることになってしまう。



「私も教えてあげるから、早く終わらせちゃお」


「わーん、明日香大好きー！」



抱きついてきた咲那の頭をよしよしと撫でてあげて、近くの机を二つくっつける。


数学が苦手な咲那に一問ずつ教えてあげていると、いつの間にか二時間程経っていた。



「そういえばね、悠真(ゆうま)くんが今度の試合、よかったら明日香と見においでよって言ってくれてね」



咲那が頬を赤くしてぽつりと呟いた。


悠真、大倉(おおくら)悠真は、中三になって初めて同じクラスになった人で、クラスの中でも明るくて人気者でサッカー部に入っている。