そう。“勘違い”しようもないのだ。みんなの王子さま折原透は唯花の恋人なのは“事実”なのだから。

 32歳と25歳、7歳差のふたりが週末同棲状態になっている。
 真面目で地味なお局様と言われる自分と透が交際しているなんて会社の人たちは想像すらしないだろう。

「今日は早く上がれたからハンバーグ作ってみた。唯花さん好きだよね。ソースは缶詰で手抜きだけど」
 透は唯花の手を引いてキッチンに誘いながら言う。

 いや、手抜きとは普段の私のようにチンする出来合いを買ってくることをいうのだよと思いつつ「ううん、折原君のハンバーグいつも美味しから嬉しい。ありがとね」とお礼を言う。

 すると彼は嬉しそうに目尻を下げて手をギュッと握ってくる。
 やっぱり飼い主に褒められたゴールデンレトリバーのようだ。

 ちなみに彼は我が物顔でキッチンを使いこなしているが、ここは唯花の借りている賃貸アパートだ。
 一度彼に合鍵を預けたら、そのまましれっと使い続けている。週末は鍵を活用し唯花の帰りを待っていることが多い。
 まあ、彼は信用できる人だから、悪用しないだろう。たぶん。

 彼の作ってくれた美味しい夕食を頂き、ふたりで片づけをし、彼が唯花の為に買ってきたというパステルカラーのトゥンカロン――この王子、女子の列に並んでゆめかわスイーツを買うことにも躊躇しない――を頂く。