髪も染めてないしピアスもしていない。体格もずいぶん逞しくなっているし、目つきも優しく、性格まで温和になってたのだから。

 唯花との出会いの後、透は心を入れ替え生活も改め猛勉強した結果、現役で大学に入学。
 卒業後は一流企業である今の勤め先に就職できたというから大したものだ。

 しかし奇跡的な再会に驚いたのもつかの間、信じられない展開が待っていた。

『佐山さんは俺の人生を変えてくれた恩人なんだ。本当にありがとう。奇跡的に再会できたのは運命だと思う。その証拠にあなたを好きになってしまった。付き合って欲しい』
『お、落ち着いて。後半著しくおかしいこと言ってるからね! 私何歳だと思ってるの!?』

 再会から間もなく、誰もいない非常階段で壁ドンされ熱烈に交際を申し込まれたときは、ドン引きして全力でお断りした。

 しかし、どんなに断っても透は引かなかった。唯花の情に訴え続け、最終的には会社の外で主人を待つ忠犬のように待ち伏せするようになった。
 結局唯花は会社でオープンにしないことを条件にとりあえずお付き合いを受け入れた。  
 ようは、絆されたのである。