『なんだか酔っ払いに付き合わせた感じになっちゃってごめんね。もう危ない目にあわないようにね』
『わかった……あのさ』
『うん?』
『かわいげとかよくわからねぇけど、あんた、結構かわいいと思う。慰めとかじゃなくて』

 こちらを見る彼の目は嘘をついているようには見えなかった。唯花も照れつつ素直にお礼を言った。

『そっか、嬉しい。ありがとう……じゃあね』
『うん……じゃあ』

 お互いの名前も連絡先も告げなかった。それでいいと思った。
 銀色の狼みたいな美少年の更生を願いつつ、きっと二度と会うことはないと思っていたのだが――

(まさか、再会しちゃうなんてねぇ。しかも狼がワンコに成長してたという……)
 
 彼が就職したのは偶然にも唯花の勤め先の親会社の桜田フーズ。さらに入社4年目にして唯花の勤務先であるサクラダペットフードに出向してきたのだ。

 透が部長に連れられ経理に出向の挨拶にきた時、唯花は『わぁ、スーツの似合うイケメンさんだ。こりゃ女子にキャーキャー言われるな』と思っただけで、あの時の不良少年とは認識できなかった。

『俺はすぐにあの時のおねえさんだって気付いたのに』と透は未だに拗ねるが自分は悪くない。彼が変わり過ぎたのだ。