多感な時期、積もり積もったものが爆発したのだろう。

『だから盗んだバイクで走りだしちゃったわけだ』
『……なんだよそれ。バイクの免許もってねぇし』

 ただでさえ目立つ容姿の彼がグレたのだから、すぐに悪い輩に目をつけられたようだ。男女問わず。
 
 初めは透の話を聞いていたのだが、いつのまにか唯花も自分の身の上話をしてしまっていた。
 両親が高校の時に相次いで病気で他界し、祖母と暮らしていたこと。祖母に迷惑を掛けないように真面目に生きてきたこと。動物が好きで本当は獣医師になりたかったけれど高額の学費を前に諦めたこと。

 そして就職先では人間関係が上手く行かない自分に嫌気がさしていること。

『実はさっきの飲み会でも、上司や先輩に真面目過ぎてかわいげがないとかつまらないって言われてね……』
 気付けば情けないことに高校生相手に愚痴を言っていた。
 
 しかし唯花の話を聞いた透は当たり前のように言った。

『真面目の何が悪いんだ? 誰にも迷惑かけてなくて、あんたがいいならそれでよくね?』
 俺が言うのも変だけどさ、と少し照れる彼は最初の印象と違って年相応の少年に見えた。

 終電を逃してしまった為、無理やり彼の母親に連絡を入れさせた後、そのままファミレスでつらつらと話
した。そして始発が来るのを待って駅で別れた。