唯花が気にしていることはそういうことではない。

「なら、なんで……」
「ほら、社内で知られると何かとお互い仕事やりにくくなりそうじゃない。それこそ奥村さんたちに何言われるか。めんどうじゃない? 私、落ち着いて仕事したい」
「俺は別に平気だけど、唯花さんの仕事がやりにくくなるのはいやだな……」

 透は納得してくれたのか、それ以上言ってこない。
 ホッとしつつ唯花はうさぎの顔がデコレーションしてあるイチゴバニラ味のトゥンカロンを口に運んだ。

 見た目に違わずとてもとても甘い味がした。


「ねぇ唯花さん、このベッド買い替えない? お金なら俺が出すし」

 風呂を済ませた透が、既にベッドにいる唯花の隣に身体を滑り込ませながら言った。

 確かに唯花がこの部屋で元から使っているベッドはセミダブルなので1人にはちょうどいいが2人寝るにはどう考えても窮屈だ。
 長身の彼とならなおさらだ。

「このままでいいよ。気に入ってるし」

 彼には申し訳ないが愛用のベッドを買い代えるつもりはない。

「……まあいっか。こうやってくっ付くと、寝る時だけは唯花さんが俺から離れないって安心できるし」
「折原くん?」