なのに、家族どころか妹としても位置付けされていなかったとはどういうことなんだろうか。

 「あのさぁ、いきなりこんな歳もかわんねぇ女が家族だって引っ越してきても、妹だって認識になるわけねぇだろ。男からしたら壱みたいなのは普通に女なんだよ。ちゃんと女なんだよ。妹になんてなるわけねぇだろ。兄ちゃんなんて無理に決まってんだろ。見れる男がいるとしたらどうかしてるよそいつ。最初から妹としてなんてお前のこと受け入れてねぇよ。戸籍上の家族、再婚したから一緒に住むって選択肢しかなかっただけで、基本的にお前の兄ちゃんなんて認識ねぇから。兄ちゃんになんてなるつもりもねぇし」

いつもとは違ったこもった声がする。
すねた子供が出すような、そんな語気。
妹としてなんて、家族としてみてないなんて言われて、本当は傷付くはずなのにまったく傷付かない。
それどころか、おかしなことに少しホッとしている。
都合のいい解釈が、肩の力を抜かせていく。
本来なら、家族としてと言われる方が嬉しいに決まっている。
けれど、この先も比べられながらの家族の一員になるくらいなら、孤立でいいと思っていた私にとってはこの上なく気持ちを楽にさせる言葉だった。

 「私は妹じゃない…?」

 「違うね」

壱矢の妹として、という自分のこなさなければならないはずだった役回りが排除されて、嬉しさに力が抜ける。
だらんとなった私を、壱矢がまた支えてくれた。

 「どう?引いた?傷付いた?」

 「いえ、まったく」

 「ならよし。帰るぞ」

ようやく壱矢が離れ、中途半端な体勢で強張った体を伸ばすと、出しっぱなしにしていた荷物をまとめ始めた。