「観ててくれたんだ」
「ファンだからね」
「生粋のね」
「何よりも嬉しい名誉だなあ」
美聖は無意識のうちにポケットに手を突っ込み、その四角い箱の感触を確かめる。
他愛のない話を敢えてお互いに意識していることはわかりきっていた。そうでもしないと、気持ちが溢れだしてしまいそうだからだ。
息吹はお姫様のような美しい衣装を着こなし、それに一切引けを取らないほど完璧な笑顔で口を開く。
「私ね、シンデレラは魔法が解けてよかったんだなって最近になってわかったの」
「え?」
息吹の耳につけたピアスがタクシーの揺れに合わせて、きらきらと輝く。