この靴でここまで走り続けたのかと思うと、美聖はそんな健気な息吹が愛おしくて泣きそうになる。




「ちょっとごめんね」

「え?っわ」




美聖は息吹をお姫様抱っこすると、タクシーに向かって走り出す。


そうしないと美聖と息吹に気がついて追いかけてくる周りを巻けないとわかった息吹はフードをさらに深く被って美聖にされるがままになった。



タクシーに乗り込み、車が走り出したところで美聖も息吹もようやく安堵の息がこぼれ落ちる。



美聖が息吹のフードを外し、その顔を覗き込む。息を飲むほど美しい息吹と目が合う。


その綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。


息吹の黒目が美聖を通り越して、その奥へ向けられる。