国際フォーラムから有楽町駅に続く道のりに多くの人が自然と列を成している。その中で、大きな人だかりができている場所を見つける。
「息吹」
その輪の真ん中に息吹がいると気がついた瞬間、美聖は走り出していた。息吹の存在に夢中になっていた人達が、今度は美聖の存在に気が付き、さらに騒がしくなる。
「すみません、通してください」
美聖は人の群れを割って突き進んでいく。その途中で息吹のスマホが地面に落ちているのに気が付き、拾う。
誰もが息吹に気を取られ、スマホの存在に気づかず蹴飛ばされてここまで流されてきたのだろう。
ダウンコートのフードを目深に被って、しゃがみこみスマホを探す息吹を見つけると、真っ直ぐと手を伸ばす。