息吹は泣いていた。苦しいだろろうに泣きながら一生懸命声を繋いで、走って、美聖に想いを告げる。
「だから今度は私が美聖くんに会いに行くのっ」
美聖の鼻の奥につんと泣く直前に到来する痛みが走る。
「(……ああ、俺は何があっても彼女を離したくない)」
もうすぐ有楽町駅に着く。美聖はタクシー運転手に停めてもらい、再び戻ってくると謝ってから待っていてもらう。
美聖も駅に向かって走りながら、息吹に問いかける。
「息吹、今どこにいる?」
「もうすぐ駅、」
次の瞬間、電話越しに何か固いもの同士がぶつかる音がする。がやがやとした喧騒が続き、息吹の声が聞こえなくなる。
美聖は「息吹?」と声をかけながら必死で駅に向かって走る。