「はあ……」




無意識のうちに溜息が零れる。手にしていたチケットを翳して眺める。


毎年仕事の合間を縫ってパワースポットと呼ばれる名所を行き着くし、願掛けし、当選を勝ち取る紅白歌合戦のチケットだ。


既にチケットに提示されている開場時間は過ぎているが、都内に住む美聖は今から向かえばまだ間に合う。




「……。」




代表の接触禁止の言葉が脳を掠める。その後に片平の言葉も続く。



「───、」



美聖は深い呼吸を繰り返してから、そのチケットをビリビリに破り捨ててゴミ箱の中へと落とした。



それから、服のポケットに忍ばせている四角い箱の感触を何度も手のひらで確かめて目を閉じた。