ずっとそばで見守っていた片平が「美聖さん」と、その小さく丸められた美聖の背中を優しく叩く。




「美聖さん、明日の仕事に備えて今日は帰って休みましょう」

「……片平さん、ごめんね」

「……。」




美聖の泣きそうな声が片平の耳に届く。蹲るように膝を折りたたんでそこに腕をまきつけ顔を埋める美聖がどんな顔をしてるのかはわからない。


片平は怒って欲しくなかった最悪の予想が最悪のタイミングで訪れたことを恨めしく思う。そして、そのタイミングは敢えてぶつけられたことにも腹立たしさを覚えていた。




「美聖さん、代表の言葉、ちゃんと聞いてました?」

「接触禁止」

「全く。これだから美聖さんも息吹さんもお互いに夢中で困ります」

「え?」




片平がマネージャーとしてあるべき姿なのは木村のような毅然とした態度なはずだ。同期である木村とは仕事以上の話にもなる。その時、彼女が息吹の幸せを願っていることを、片平も知っていた。