息吹はそんな美聖の様子に何か言いかけては口を噤む。それを繰り返すうちに、木村に腕を引かれて美聖の元を離れゆく。




「美聖くん」




漸く絞り出した息吹の声に、美聖の身体がぴくりと反応して、押さえつけるように動きを止める。


そんな美聖に、息吹が木村に引っ張られながら声を紡ぐ。




「──……"約束"だからね」




美聖は息吹から放たれた二文字に、反射的に顔を上げていた。遠ざかる彼女は振り向きながら、左手の小指を美聖に向けていた。

苦しそうな表情の中、美聖と目が合うと必死に彼女は口角を上げた。




「っ、」




美聖は息吹の姿が見えなくなったところで、その場に蹲って後悔で押しつぶされそうになるのをひたすら堪え続けた。