息吹は美聖の涙を優しく拭って、それから、ふと、その視線を記憶の中へと向ける。


ぼんやりとした眼差しで、笑顔を称えたまま、息吹が呟く。



「…………終わっちゃった、」

「、」

「一個ずつ、ひとつずつ、私が消えてく」



息吹の瞳が過去を辿るように、色を失う。いつも宝石が詰め込まれた瞳は、今はただひたすらに淋しげに、ぼんやりとただそこに在るだけ。


だらり、と息吹の手が美聖の頬から離れて、落ちる。



「自分で選んで決めたはずなのに、今まで立ってた居場所がなくなるのって、こんなに、……つらいんだね。 」



そう言う息吹の口元には柔らかな微笑が携えられたまま。固く、石像のように、その表情であることが正しいと縛られたように。



「でも、ファンは選ぶ余地なくcoc9tailを失うわけだし、私の勝手な我儘で、私を応援してくれる人達の前から消えるわけだし、」



美聖は息吹の言葉を遮るように、涙を零しながら言った。