「今まで黙ってたんですけど実は僕、優衣推しなんです。美聖さんに連れられてcoc9tailに会いに行くたびに優衣の健気なところに惹かれて」

「どうしてすぐ教えてくれなかったの?」

「美聖さんの最推しは息吹さんじゃないですか。息吹しか勝たんみたいなノリじゃないですか」

「俺はcoc9tail箱推しだよ……」

「言い方変えます。息吹さんにガチ恋じゃないですか」

「……。」




片平は暗闇の中、微かに見える美聖の美しい顔を見つめて言う。




「好きな子ひとりぐらい、いい加減射止めてくださいよ。国民の王子」




片平なりの応援だった。マネージャーとしてではなく、同じライブを見に行く同志として。


ずっと美聖が息吹を推すのを見てきたのだ。じれったいラブストーリーよりもじれったい。


片平の言葉に、美聖が鼻を啜って、白い歯を見せて笑った。