「息吹さんを知れば知るほど、貴女に追いつきたくて隣に並びたくて、息吹さんのファンであることに恥じない自分になろうって、頑張れた。アイドルとしても人としても、永遠に尊敬してます」




調整を終えたカメラが回る。監督の掛け声が息吹の耳の奥でアラームのように響く。


全ての世界がぼんやりと色や形を曖昧にした中で、目の前の美聖だけがはっきりと息吹の視界に映し出される。




「俺と出逢ってくれてありがとう」



《──── 柊くんの前だと息吹がただの女の子みたいで可愛いなあってこと》



その刹那、息吹はデビューしてから初めてカメラが回っていることを忘れた。coc9tailの黛 息吹を身につけることも忘れ、美聖の言葉に、瑞希の言葉に、心を刺激され、




「……っ」




白く透き通る肌を真っ赤に染め上げた。既に役者のスイッチが入っていた美聖も、そんな息吹に気づき、色素の薄い瞳に微かな動揺を見せる。